静かな夜。ふとしたさみしさが襲ってくる。私以外の周りの人はみんな、幸せそう。
こんな孤独な夜を過ごしているのは、自分だけに違いない。
この気持ちに耐え切れず、今日もお酒を手にしてしまった。
お酒をなかなか手放せない理由が「孤独」だとするなら、あなたは毎日誰かと一緒であれば、お酒は飲まずに済むのでしょうか。
「孤独」は「さみしい」という感情と同じ方向にある言葉のように感じますが、「さみしい」という感情は、誰かがそばにいるのか、いないのかということには、関係がないこともあります。
その証拠に、ご家族と一緒に住んでいる方の中にも「孤独」や「さみしさ」を感じている人は少なくありません。

つまり、お酒をやめたいと思う人にとって「さみしさ」という感情をコントロールすることは、結婚していることや、子どもがいること、誰かと一緒に住んでいることなどにかかわらず、誰もが向き合うべき心の問題です。

感情には、プラス感情(快)とマイナス感情(不快)の2種類があります。
お酒がやめられない、と悩んでいる人の多くは、不快なマイナス感情から逃れたり、嫌な気分をごまかしたりするための手段としてお酒を飲んでいる人が多いもの。
だとしたら、解決方法は、飲酒欲求とつながっているマイナス感情と仲良くなることです。
仲良くなる、というのは、その感情をあなたがちゃんと受け止め、感情があなたにもたらす意味を考える、ということ。
そのために、まずあなたにできることは、思うままに「感情を受け止め、味わう」こと。
「さみしいな」と感じているなら、その「さみしい」という感情そのものを、手に取って眺めて見るような感覚で味わってみるのです。
そして、自分の中から生まれてくる言葉を受け止めていきましょう。
ここでポイントがあります。
自分の言葉を「あなたの大事な親友が発した言葉」だと思って、共感し、寄り添い、質問があったら、丁寧に言葉を返してみてください。

決して否定したり、正しい意見を言ったり、相手の考えを変えようとしないこと。
心の声にただただ寄り添い、聴くことにフォーカスすること。
とはいえ、やったことがないからわからない、一体どうやったらいいの? という方のために、私が先日、夜中に「さみしさ」を感じた時にどんなふうに向き合ったのか
頭の中の言葉をただ並べた単なる記録ですので、かなり冗長な表現ではありますが、誰かの参考なればとの思いから、ここに残しておきますね。

「さみしいって感じているみたい」
「そうなんだね、さみしいんだね」
「一人だと、こんな日もあるよね」
「誰かと一緒にいられたらこんな感情を味わわなくても済むのかな」
「うーん。確かにさみしいという気持ちは少なくなるかもしれないけれど」
「一人では感じなくても済む気持ちもあるよね」
「例えば?」
「相手にあわせて疲れちゃったり」
「気をつかい過ぎてしまったりとか」
「お互いの違いは楽しいことも多いけど、そうじゃないところも引き受けなくちゃいけなくなる」
「天秤にかけてみて、誰かといるのと独りでいるの、どっちを取りたい?」
「うーん、今すぐ答えを出さなくちゃいけない?」
「どっちでもいいよ」
「そうだなぁ、誰かと一緒にいるということは、さみしさ以外のマイナス感情もすべて引き受けることになるってことだよね」
「それって、結構大変だよね。忘れてた」
「逆に今は、さみしさも感じてはいるけれど、その代わり、一人だからこそ気楽に生きられるというメリットも、思う存分、受け取っているんだよね。
「気ままに遊びにでかけたりとか。今日は別にしたいとは思わないけど」
「そうそう、どんなことにもプラスとマイナスの両方があるってことよ」
「今度、また一人旅でも行こうかな」
「旅って、行先を決めているときが一番楽しいよね」
「そうだね、どこがいい? 近いうちに、行けそう?」
「いつになるかはわからないけど、行先だけでも決めてみようか」
さみしい感情に支配されてネガティブのではなく、さみしい感情を手に取って眺め、さみしいと感じているもう一人の自分の話を聴くイメージがもてたでしょうか。
ここまで、せいぜい10分もありません。ここまでくると、「さみしさ」は、消えていました。

さみしいと感じている自分に対して、かわいそうだと同情するのでもなく、卑下するのでもなく、ただただ、そのまま受け止める感覚です。
これがこの日の私の「さみしい」気持ちを見て見ぬふりすることなく、受け止め、なにかしらのゴールにたどりつくプロセスでしたが、これが正解というものではありません。
あくまでも、たまたまこの日がここに落ち着いただけであり、感情と向き合った先に何があるのかは、わからないものです。
つまり、正解は、あなたの感情をスタートにして、自分との対話から導き出すだけ。
この日は、「ここに誰かいたらいいのに」という「ないもの」に注目している自分に気づいたので、逆に今すでに「あるもの」はなんだろう? と視点を切り替えることができました。
これもまた、アドラー心理学で大事にしている視点です。どこに目をつけるのかで、心のもちようは変わるものです。

お酒を飲まないということは、シラフで、好きなだけ、夜の時間を物思いに更ける時間がある、と考えることもできます。この日の「孤独感」がプレゼントしてくれた時間です。
この感情と向き合う方法には、「癒し」の効果もあります。自己受容という、ありのままの自分を受け入れることが心を穏やかにしてくれるのでしょう。
マイナス感情は、いつだって、私の目の前にたくさんの選択肢があることを教えてくれます。決して敵でも悪いものでもありません。
一日一日飲まない日々を重ねていくのと並行して、心と向き合うことを積み重ねていきましょう。